加茂谷地区の住民やそこを訪れる人たち、さらには新たに参入を目指す人たちに対して、元気を与え、活気あるまちづくりと若者の定住を図るための事業を行い、よって地区住民の郷土愛の向上に寄与することを目的に発足した特定非営利活動法人です。
当会では、地域農業を支える若者を呼び込み、定住を図る施案を重ね、これまでの実績として、令和3年度までに7戸の移住就農者を受け入れてきました。
加茂谷地区で空き家や農地を積極的に探しており、良さそうな物件があれば、移住者の方に斡旋するという活動を行っています。
就農誘致移住者定着事業
加茂谷体験ツアー
農業ボランティア受け入れ事業
空き家や農地の紹介を通して、令和3年度までに7戸の移住就農者を受け入れてきました。
農業支援制度はもちろん、地元のベテラン農家さん、支援センター、そして先輩移住者といろんな方向から移住前でも、そして移住就農した後も長くフォローをしています。農業初心者の方もどうか安心してください。
農業って始めるまでは『やっていけるのかな?』と不安なこともあると思いますが、加茂谷なら「なんとかなる!」そう思ってしまうくらいの支援体制なんです。
農機具シェアリング
空きハウスマッチング
移住就農サポート隊
新しく農業をはじめる方への支援として、農山漁村未来創造事業計画に応募し、町をあげて就農サポートに取り組んでいます。
新規就農者の抱える課題に対して、当会所属の熟練農家のマンツーマン指導を実施。課題を解決し、農業経営の安定化を早期に促す事業に取り組んでいます。
移住就農定着モデル事業を実際に体験してもらった3名の移住者さんにインタビューをしました。
2014年、東京で開かれた「新農業人フェア」に夫婦で参加し、仕事や移住など生活面を加茂谷元気なまちづくり会と相談する機会がありました。
加茂谷に来るまでは、全国に転勤がある神戸市の会社に勤務し、夫婦で二人とも国内外の出張が度々あり、1週間顔を合わせないこともありました。
私(孝文さん)の三重県鈴鹿市への転勤がこれからを見直す大きなきっかけになり、2015年、2泊3日の加茂谷体験ツアーに参加しました。
移住の理由はいくつかありますが、先輩農家から作物の栽培について十分な指導を受けられること、地域住民の温かい人柄、歓迎されていることを感じられたことが大きく、体験ツアーの農業体験を行う中で移住を決意しました。
15年秋に妻(亜姫さん)が先に、翌年3月に私が移住。
最初の1年は新規就農を支援する農林水産省の青年就農給付金-準備型(当時)を受け、先輩農家の下で実地研修をしながら農業に取り組み始めたという経緯です。
チンゲンサイとハウススダチです。
チンゲンサイを栽培することに決めたのは、年間8~9回収穫可能で、1回収穫が思うようにできなくても挽回可能なこと、初期投資の費用があまりかからないことでした。
気温が高くなる夏場はチンゲンサイの栽培が難しくなるので、夏場に収穫のピークがくるスダチを栽培しています。スダチは暖房をたかない無加温で育てています。
スダチは年によって収量・単価共にばらつきがあり、手をかけて育ててきた結果が7月にならないとわからないという難しさがあります。
ビニールハウスの修繕や設備投資には大きなお金が必要になります。
収穫したスダチについても、秀品(傷のない綺麗な状態)かそうでないかで売上げにも影響があります。なので、秀品率の向上は大きな課題です。
私たちがスダチを育てているハウスでは、ビニール自体が古く、雨漏りもあり、病気等の発生により秀品率を上げられない状態でした。
こういう現状を抱えていたときに、モデル農家事業のお話しをいただき、設備の修繕やアドバイスを実行出来るようになりました。
JAアグリあなん「ハウススダチ部会の部会長」である松崎克弘さんです。ご自身もハウススダチを10a栽培しています。また、胡蝶蘭も14a栽培しています。
農業歴は40年以上で、今でも手を抜かず熱心に取り組んでいて、松崎さんのスダチハウスには、雑草1本も生えていません。土づくりから、剪定、防除、加温等の技術において、全てお手本となる人です。
また、移住就農者の状況をとても気にかけてくれています。
ハウススダチ以外の作物でも圃場に出向き、声をかけてくれたり、アドバイスをくれたりします。
他にも、町内の草刈りなどの出役には、積極的に参加され、地域住民からの信頼も厚い人です。
ハウスのビニールを古いモノから新しいものに変えました。
加温の効率は改善され、雨漏りでの病気の心配も少なくなりました。
スダチの剪定についてもアドバイスを頂き、長い目で見て将来の木をどうしていきたいのか深く考えるきっかけになりました。
収穫後も次の年に実を付けるために枝をどのようにコントロールするのか、剪定が重要になります。自分の経験や知識とはまた違う先輩の指導に刺激をもらいました。
スダチの収穫は年に1度なので、具体的な成果についてはまだ分析の途中です。
前述の通り、ハウスのビニールを変えた効果は感じています。
私の場合は就農から数年経過し、自分なりのやり方や考え方もあったのですが、今回機会をいただき、スダチにとって重要なハウス内の温度管理や剪定を指導いただき、自分たちでは試さなかった部分も確かにあり、経験値はあがりました。
今年の夏も剪定を行い、モデル農家事業を通して長い目で収量をキープするための考えを深める機会になりました。
まずは売上げを上げることです。そのためには、販路について拡げたいし、育てる作物も利益の上がる品種を検討しています。時期を見てその時その時で適した作物に作り替えたいとも考えています。
売上げももちろん大事なのですが、できるだけ農薬を減らしたり、環境負荷の低い農法を選択したりと食の安全や未来についても取り組んでいきたいです。
小さな子供がいるので、なおさら大切にしていきたい目標です。
新規就農や地方移住について、正直に言えばもちろん「よかった面」も「そうでない面」もあります。
事前に想像できたことや想像出来なかった部分もあります。
向きや不向きもあるので、まずはツアーや体験移住に参加してみては?と思います。
なんだって自分たちのやりたいように出来る自営業としての自由さ、夫婦一緒に働けるのも農業のよさですね。ただその分仕事とプライベートの境目がなくなってしまう面もあります。
コツコツと作業をするもよし、日々実験をしているような感覚です。こうなると予想していたことが当たったり外れたり、まだまだワクワクする瞬間があって、日々新しい発見があります。
テレビでスダチやチンゲンサイの特集があったりすると、嬉しくなるんですよ。食べる人に届くまでを色々考えられる。社会の一員として食べ物を作って生きている感覚です。
自分でとって食べる野菜は美味しいし、口にする食品を生産する側にまわるのはやりがいがあります。農業は親が何をしているのか、子供にわかる仕事、夫婦で試行錯誤して、娘とともに楽しいと思える瞬間を感じています。
大阪で開催された「新・農業人フェア」というリクルートフェアで、「加茂谷(かもだに)元気なまちづくり会」のブースを覗きに行ったことがきっかけです。
次の月に体験ツアーがあるから来てみないかと誘われ、まあ徳島であれば大阪から近いので一回行ってもいいかなと思い参加しました。
ちょうどその時が45歳になる年の3月で、もし就農するなら青年就農給付金(現在の農業次世代人材投資資金)が年間150万円給付され、それに応募するには45歳までという年齢制限があったので、思い切って当時働いていた広告代理店を辞めて、第二の人生として就農することに決めました。
チンゲンサイです。登山家が「そこに山がある」からと言ったのと一緒で、「加茂谷にはチンゲンサイがあるから(笑)」。
JAアグリあなん チンゲンサイ部会の部会長も家の近くに住んでいるため、いろいろ話が聞け、気軽にハウスも見に行けるという環境も始めやすかったです。また、チンゲンサイは種まきから2か月ほどで収穫でき、失敗してもやり直しがきく野菜なのも理由の1つです。
モデル農家となるためには安定した収穫、収入が必要となります。
そのためには営農面積を増やす必要がありますが、ここ加茂谷でのビニールハウスの確保は難しく、それに対する投資も現在の経済状況ではままなりません。
まずは現状の面積で収量をあげる必要があります。JAへの出荷は秀品出荷が原則で害虫被害にあっている野菜はミリ単位の穴でも許されません。ですので、極力害虫被害を少なくし収量を上げる必要があるのです。
限られた面積でどれだけ収量を上げ収入を増やすかが鍵になるのです。
前述にもありましたチンゲンサイ部会の部会長が指導農家になっています。就農を始めた時から様々な指導を受け現在に至っています。
まずは害虫等が侵入する場所を極力減らすと言う事から始まりました。
ハウス自体建ってから何十年と経っているので、補修する箇所は多数ありました。止水シートは穴だらけ、防虫ネットも穴だらけ。
これでは害虫の侵入を防ぐ事ができず秀品率も落ちてしまいます。
その補修をメインに行うことになりました。
止水シートや防虫ネットを新しくし、その進入路を減らすことで、ナメクジ被害が目に見えて少なくなりました。
加茂谷地区、特に楠根町はナメクジが多く、その被害に悩まされていました。
酷いときには1/3が食害にある状態だったのです。
時期にもよりますが、秀品率が70%から85%位の改善に繋がったと感じています。
確実な数字が場所によっても違うのでなんとも言えませんので、おおよその体感です。
正直日本の経済状況からみて、農業はなかなか楽観視のできない状況だと思います。なんとか現状を維持し、生活が出来ていけるようになればいいなと祈るばかりです。
「農業なんてやったことないのによくできるなあ」と言われますが、それはやろうとしていないから。別にできるかできないかなんて「やってみないと分からない」。それを、「やってできるようにする」。宝くじと一緒です(笑)。買わないと当たらない(笑)。興味がなくても、やってみたら楽しいかもしれませんしね。全然知らないことをやるのは難しいですが、やらないことには分からないし、不安に思っても仕方がない。それは農業じゃなくても一緒だと思います。少しでも、農業に対する気持ちがあるのであれば、やってみたらいいと思います。
新規就農を目指して、2020年3月に家族で千葉県千葉市中央区から徳島県阿南市に移住しました。
就農を目指す前の私は、IT企業の保守部門に15年ほど勤務、これまで農業の経験は全くなく、就農や移住するなんて構想はありませんでした。
最初の転機は、両親とその年の帰省スケジュールについて話をしていたとき、父と母が徳島県那賀郡那賀町の旧木頭地区にある祖父母の農地で、柚子の栽培をしていることを知ったときです。
帰省した際に両親に、柚子の栽培を継ぎたいという話をしてみました。結果は激しい反対でした。農業という仕事の辛い面、また収入面の心配だと理解はできますが、私の中でこんなふうに思われる農業のイメージを変えたいという確かな想いが固まりました。
その後は妻と相談しながら行動をおこし、直接就農せずに、【農業専門の人材サービス】の会社に転職し、農業や農家さんと接する機会を得ます。たくさんの農家さんと直接話をしましたが、つらく厳しい現実がある中で、皆さんとても前向きに「農業は面白い!! 」と豪語する方たちばかりでした。
私の中では、自分自身が就農し、しっかりと稼ぎ、自分自身がモデルになり農業が素晴らしい仕事であると伝えたいという想いはますます膨らみます。
就農への想いとは別に、「子供が成長する環境」について、都会とは別のより良い選択肢があるのでは?という疑問は夫婦共通の悩みとしてありました。
2019年、私の故郷である徳島県が主催する移住セミナーが開催される情報を得て、夫婦でセミナーに足を運びました。移住についてのコンシェルジュの方から聞いた「移住先が合わなければ戻ってくればいいし、人生は長いんだし! 」という言葉は、これまでの「移住」に対するイメージをかなり覆してくれました。
その年、帰省のタイミングで加茂谷地区を実際に訪問してみました。目に入るのは、美しい山々や川、一面の田んぼといった、日本の原風景のような景色ばかり。子どもたちは、「なにもない所だね! 」とびっくりしていましたが(笑)
加茂谷元気なまちづくり会の会長と、阿南市の移住コーディネータの方、先輩移住者の方に集まっていただき、直接お話をさせてもらいました。子どもの学校のことや、病院をはじめとした生活環境のことについても、良いことも悪いことも含め、皆さんが丁寧に教えてくれました。
さらに、タイミングよく素敵な空き家が見つかったところで、運命を感じた私たち一家は、移住を決断したんです。
チンゲンサイ 20アールと木頭ゆず 30アールです。
移住就農を決めた材料の一つとして、県の職員の方に見せてもらった農業収支モデルも、チンゲンサイの栽培を元にしていました。
ビニールハウスを利用することで、季節を問わず何度も栽培ができるというメリットがあり、1年間に8作以上チンゲンサイを栽培している農家さんもいらっしゃいます。
この地域で推奨しているチンゲンサイのような1年の間に何回も作ることができる野菜は、仮に1作分がダメになってしまっても、残りの作で取り返すことができるんです。
さらに、1年の間に何回も作ることで、短期間で技術の向上が望めます。私は現在、2年間で70回以上栽培しました。年に一度収穫する木頭ゆずで言えば70年分の経験値です。
農業を始めて間もない新規就農者として私に声をかけて頂きました。
まっさらの就農者でも、適切な施設修繕やベテランのアドバイスがあれば、収量・秀品率向上が実現出来るかどうかのいわば実験のような経緯です。
設備修繕や設備投資にはもちろんお金が掛かりますし、右も左もわからない私にベテラン農家さんからの指導はありがたいお話しでした。
例えば、チンゲンサイについては、種を蒔いてから出荷するまでの期間は4月(春)と12月(冬)では差が出ます。
一年の間で何度も栽培するので、季節によって、堆肥の量や病害虫への対応は変わります。私にはまだまだ経験値がないので、指導はとても助かりました。
山下 和久さんです。加茂谷元気なまちづくり会の会長であり、私を加茂谷へ導いたその人。
30年以上の農業経験から指導農業士としても活躍しておられます。
それでも情報収集は怠らず、YoutubeやSNSを駆使して、野菜の栽培に関する新しい情報を取り入れている姿勢は、見習うべき点です。
自身でオリジナルの堆肥まで作っており、移住者のお世話や、町内の出役など、なんでもこなすスーパーマンのような人です。
まず、設備については老朽化したり破れているビニールハウスのビニールについて厚めの厚めの被覆ビニールに変更し、雨漏りや、汚れによる意図しない遮光など、環境の改善に取り組みました。
強い日差しを防ぐ設備もなかったのですが、寒冷紗を導入し、直射日光を和らげることも出来るようになりました。病害虫の侵入を防ぐ止水シートにもダメージがあり、補修対応しました。
栽培技術については、まずは種まき~出荷までのサイクルをしっかりと把握することが収入の安定化に必要だとアドバイスをいただき、「アグリノート」というスマホアプリで作業の記録をつけるように改善しました。
堆肥については、作物や圃場に適した量をやらないといけないのですが、チンゲンサイの生育状況から堆肥の過不足を判断する必要があります。同じハウスの中でも、ある部分は多い、ある部分は少ない、という状況を的確に把握するのは難しく、指導をいただきました。
病害虫への対応についても、季節によって変わるため、代表的な病害虫の説明と、症状の目視を教えていただきました。
病害虫については作物が全滅した経験もあるので、とても重要な課題でした。
栽培技術については、堆肥や病害虫への知識が補強され、また、栽培の記録から経験をしっかりデータ化し、振り返り及び比較をすることで、適切な栽培計画を立案できるようにレベルアップを感じています。
設備の修繕については、老朽化による雨漏りや、汚れによる意図しない遮光など、環境の改善が期待できます。寒冷紗などの直射日光を和らげる設備を導入することで、品質の安定性向上も見込まれています。
設備の改善を通し、作業性が向上することで、本来必要だった作業時間の一部を、別の作業へ転用することが出来るようになりました。
収穫量について、記録で振り返ったところ、前年比で1.5倍の増加を達成しております。
世の中の農業の持つイメージを変えたい。そのためには自分自身がモデルとなって、この仕事の素晴らしさを伝えたいという想いで試行錯誤を続けています。
そのためには、短期的には収入の安定化は重要な目標です。しっかりと稼げる職業ですよ、と発信して、就農を検討している人の背中を押せたらと思います。
農協や、すきとく市(農産物を自分で値段をつけて、好きな量だけ出荷できる仕組み)以外の販路についても検討して、より収益の安定化を検討しています。
長期の目標としては、私たちが移り住んできた加茂谷の活性化に少しでも貢献できればと、そのためにも農業の印象を変えられるようなモデル農家として成長していきたいですね。
チンゲンサイの栽培については、私の記録しているデータを元に、収益が安定するようなマニュアルの製作を予定しています。
本気で移住や就農を検討している方は連絡を下さい。聞いてみたいことがあれば、いくらでも情報を提供しますよ。
肌で感じていることですが、農業という仕事は、事前の計画の重要性、知識・技術の蓄積、先人のマニュアルがちゃんと存在しているという面において、以前に私が就いていた仕事と変わりはありません。いくつもある職業の選択肢から外さなくてもよい仕事です。もちろん本気で取り組めば、という注釈は入りますが。
移住や田舎に住むことについても、ハードルを上げなくてもいいのかなぁと思っています。
「移住は決して、一大決心しなくてもできる! 」「移住先が合わなければ戻ってくればいいし、人生は長いんだし! 」という移住セミナーで聞いた言葉は本当だなと思っています。
もしダメなら千葉に戻ればいい、私もそのくらいの気持ちでした。
無責任に言わないでといわれるかもしれませんが、そのためには事前に情報収集をしっかりとしてください。私も情報を提供出来ればと思います。